第3章 honey.3
「ごめんな、妹くん」
いつものチャラけた声よりも引く呟いた彰は、ぐっと体を俺に近づけた。
何考えてんだこいつ!
いつも彰の考えは理解に苦しむが、今の状況には特に理解に苦しむ。
妹くんと呼ばれたことで彰が自分の正体に気づいてることが分かったのか、歩はすっと笑みを消すと彰に向き直った。
「センパイは真澄の、なに…?」
自分の背丈よりも高い彰を睨み上げながら、敵対心むき出しの歩。
「俺はまっすんの愛人♡」
ふっざけんな!!
にっこりと微笑んだ彰に悪寒が走りそうになりつつ、近すぎる距離をどうにかしようとした所で奴の指先がスッと背筋をなぞった。
「ひ…っ?!」
いきなりの感触に思わず体が跳ねた俺を見てニヤリと口角を上げる彰。
こいつ、殺す!!!
彰の足を踏みつけようとするより早く、歩は俺と彰の間に割って入った。
「真澄は俺のだから、あげない」
そのまま蹴飛ばすように彰を屋上から追い出すとガチャンと扉を閉めた歩。
彰が再び屋上にやってくることはなかった。