第3章 honey.3
俺と歩、それから彰は屋上に出ると扉をガチャンと締めた。
屋上は基本立ち入り禁止なので、他の生徒達がくることはない。
「歩お前…教室に来るなって言ってただろーが」
こいつが教室に来るとクラス内がうるさくなるため、事前に言っていたのだ。
「だって真澄に会いたかったから」
他に人の気配がないと分かると歩はすぐにお兄ちゃんから真澄へと呼び方を変え、もう一つの表情を浮かべる。
教室や学校、人前で見せる可愛らしい妹の表情ではなく、獲物を狙うような獣の目。
「真澄…」
すっと歩の綺麗な指先が俺の頬をなぞる。
それだけなのにゾクリと背筋が粟立つ感覚に、俺の意志とは異なる感情が反応した。
「…まっすん、俺もいるんだけど…」
「うわっ?!」
徐々に近づく俺と歩の顔の間からにゅっと彰が顔を出し、慌てて距離を取る。
「…っち」
舌打ちすんな!
聞こえるか聞こえないか程の舌打ちをした歩は、ご飯をお預けされた子供のようにむすっと顔をしかめた。