第3章 honey.3
一斉に男子生徒の視線を受け、引きつる俺に嬉々として駆け寄ってくる歩にケラケラと笑う彰。
「お前…なんでここに…」
ため息を一つ落としながら顔に手を当てて嘆くと、腰に抱きついていた歩が上目遣いで俺を見る。
「お弁当、作ってきたんだよ!」
じゃんっとお弁当を見せてきた歩に周りの男子生徒の落胆に満ちた声が聞こえた。
「君が歩ちゃんかぁ…初めてまして。俺は真澄の悪友の彰!よろしくなっ」
ざわつきが収まらない教室の中で歩にすっと手を差し出し自己紹介をする彰。
歩はそれを見て、一瞬眉を潜めたがすぐに笑顔を浮かべると彰と握手を交わした。
「よろしくお願いします、彰センパイ!」
にっこりと人懐こい笑みを浮かべる歩は、どこからどうみても可愛らしい妹だが実際は違う。
獣の皮を被った男とでも言うべきか。
ツインテールに結ばれた髪に短いスカートをふわふわと揺らす可愛らしい偽の姿に、クラスの男達がゴクリと喉を鳴らす。
「とりあえず来い」
クラスに愛想を振りまく妹…いや、弟の腕を掴んで教室を出る。
廊下にもクラス以外の男子生徒が群がっていて、またため息を一つ落とすと俺は足早にその場を後にした。