第2章 honey.2
冷たい風が体をすり抜けていったと同時に背中に感じた温もり。
「…歩?」
きゅっと背中に抱きつく歩の体が微かに震えているのに気づいて俺は後ろを振り返った。
「寒いのか?」
「…どうだろ」
口元に笑みを浮かべるその姿は今まで見たことがない悲しさを秘めていた。
おあずけを食らったことへの不満ではなく、これからを不安に思っているような表情。
何が歩にそんな顔をさせるのかは俺にはわからなかった。
ただ、その時の歩は少しでも目を離せば消えてしまいそうで。
儚くて脆い何かを俺に感じさせた。
この時の俺はまだ知らなかった。
妹…いや、弟が抱える闇に。
【END】