第2章 honey.2
ゆっくりと近づく形のいい歩の唇を拒むことはできなかった。
まるで歩そのものが媚薬のように俺を煽る。
白い肌も、少し低くなった声も、俺の肌を掠る吐息も。
全てが俺を刺激する材料となる。
「真澄…」
「…っん」
ちゅっと小さな音を立てて何度も俺の唇を啄ばむ。
もどかしいその行為に体の奥が疼く。
…熱い。
ただ、このまま流されるだけの俺ではない。
「……真澄?」
離れてはくっついてくる歩の口を手で塞ぐ。
「おあずけ」
上目遣いで見つめてくる歩を見下して鼻で笑うと、あからさまにむっと頬を膨らませた。
「俺、犬じゃないんだけど…」
男口調になった歩の額を拳で軽く小突いてから、体を反転させて校舎に戻ろうとする。