第1章 honey.1
これが本当の妹だったら可愛いんだろうな。
ま、別に昨日のが初めてじゃねぇし。
ヤられたのは初めてだけど。
背中をなでてやりながらそんな事を考えていると、腕の中にいた歩がみじろいだ。
「…扱いやすいなぁ…」
ボソッと呟かれた低い言葉は俺の耳には届かなかった。
「?何か言ったか…?」
「ううん、なんでもない」
体を起こした歩と向かい合うようにして座る。
膝の上で大人しくしている歩の顔にはもう涙の跡は残っていなかった。
……と言うか。
さっきまで泣いていたとは思えないギラギラと光る瞳に俺は嫌な予感がした。
歩が纏うこの雰囲気は昨日で確認済み。
ま、さ、か…。
そんな俺の予感は見事的中した。
………ちゅ。
唇を掠めるだけの軽いキス。
「なっ…!」
慌てて口元を隠すも、もう遅い。
「よろしくね。真澄サン」
ニコリと笑った歩に俺はギシッと固まった。
どうやら俺はとんでもない悪魔を
妹に…いや、弟に持ったようだ。
【END】