第15章 【特別編】甘え日和。
窓のそばで黄昏ている俺の元に戻って来た歩は、クレープと飲み物が乗ったトレーを両手で持っていた。
「席空いててよかったね」
「そーだな」
イスを引いて、ちょこんとそこに座った歩は俺に財布を差し出すと眉を下げて口を開く。
「クレープくらい自分で買うよ?」
「いいんだよ。妹に金払わせるわけにはいかねぇだろ」
それは俺の本心だったし、女にお金を払わせることがあまり好きではないのだ。
それにおやじから毎月の生活費を十分に貰っているので、歩にお金を使わせる気は最初からなかった。
歩が買ってきたクレープを口に頬張って咀嚼する。
シロップ漬けされたパイナップルやオレンジ、白桃の甘い味が口に広がり、その後から少し甘みを抑えた生クリームが後を追うように口に広がる。
歩は苺とアイスクリームが巻かれたクレープを小さな口に入れ、もぐもぐと美味しそうにそれを食べていた。