第15章 【特別編】甘え日和。
「ごめ…」
「いや。怪我してねぇか?」
乱れた服や髪を直してやりながら問いかけると、歩は大丈夫と体を離した。
どうやら歩にぶつかった人物は謝ることもせずにどこかに行ったらしい。
すみませんの一言もないその人物に苛立ちを覚えながらも、俺と歩は近くにあったクレープ屋に立ち寄ることにした。
店の中は人が多かったが二人分のスペースは空いており、俺は歩に財布を渡して好きなものを買わせに行くと、そのスペースに腰を下ろした。
若い女子がきゃいきゃいと騒ぐ店内を見渡すことが出来る一番奥の窓際席。
人の波が見える窓辺に頬杖をついて先程の出来事を振り返った。
とっさに掴んだ歩の手首は、少し力を入れただけで折れてしまいそうで…。
そんな歩の手に俺の身体は翻弄されているのかと、そう考えると何とも言えない気持ちになった。