第15章 【特別編】甘え日和。
「真澄、どうしたの?」
すっかり考えに耽ってしまっていた俺は、歩の言葉ではっと意識を取り戻した。
「いや…なんでも無い」
「そう?」
歩はそれ以上は何も聞かず、俺もそれ以上を答えるつもりはなく、二人の間に沈黙が落ちる。
人混みの中をぶつからない様に進んでいく俺と歩。
少し小腹が空いた感覚にどこかで軽食でも取るかと辺りを見渡した時だった。
ドンッ!!
「きゃっ?!」
一瞬、歩への意識が途切れたその間に、前から歩いて来た人の肩がぶつかったのか隣にいた温もりが離れた。
運悪く高いヒールを履いていた歩はバランスが取れずに後ろへと体が大きく傾く。
「ちっ…!」
舌打ちをこぼして歩の手首を掴んで体を引き寄せる。
どさっと言う衝撃と共に歩の温もりを抱きとめると、俺は小さく息を吐いた。