第15章 【特別編】甘え日和。
「ここだよー!」
歩に案内されながらついた先は、もちろん女の子達で賑わう、男の俺には無縁な場所であった。
頬が引きつるのを感じながら、外で待っていると告げようとする前に歩は中に入って行ってしまった。
「おいっ、ちょ…歩!」
お目当ての物を見つけたのか一直線に店の中に入っていく歩の背中が遠ざかる。
数秒迷った後、ぐしゃっと髪をかき乱し、俺は意を決して店の中に足を踏み入れた。
それと同時に周りの女子から注がれる視線に居心地の悪さを感じる。
人混みを掻き分けてやっとのことで歩のそばまで行くと、既に店員と何やら楽しそうに談笑をしていた。
「あ、真澄!」
「彼氏さんですかぁ?かっこいいですねぇ〜」
語尾を伸ばす店員の口調に否定する気も起きず、口を閉ざした俺の腕に腕を絡ませ、歩はにっこりと笑みを浮かべ店員を見つめる。
「いいえ、兄です!」
「えっ?!お兄さんなんですか!」