第1章 honey.1
え…。
思った時にはもう遅くて。
「ふぇ…っ」
すでに歩はボロボロと涙を流していた。
「ちょ、何も泣くことねぇだろ…?」
「ご…め、なさっ…」
さすがに罪悪感がチクチクと俺を責める。
男だと分かっていても可愛らしい容姿のせいで、どこか疑ってしまう。
年下を泣かせる趣味は持ってないし…。
わんわんと泣きじゃくる歩を目の前に少したじろぐ。
一応、親父から頼まれた俺の妹いや弟だったな、にあたる存在。
少しお灸を据えてやるつもりで、自分でも結構キツイことを言ってしまったと思う。
……ったく。
「はぁっ…」
面倒臭いはずなのにどこ憎めない。
昨日のことは嫌だったが…。
人間一度や二度の間違いはある。
俺だって何度も間違った。
たった一回で見捨てちまうのは、ちょっと薄情…か?