第11章 honey.11
地面に叩きつけられる衝撃に備えて目を強く瞑った俺をぎゅっと包みこんだのは、紛れもない歩だった。
ぽすっと後ろから抱きしめられ、ふわりと温かな歩の体温が肌から伝わる。
「…大丈夫?」
酷く優しい声が降ってくる。
溢れそうな涙を見られたくなくて、唇を噛み締めながら歩の腕に顔を隠すように体を動かした。
滲む汗で張り付いた俺の前髪を掻き上げるように頭を撫でる歩の手のひら。
「……っ…」
小さく声を漏らした俺を強く…強く抱きしめてくれた歩はしばらくそのまま頭を撫でてくれていた。
その優しさと温もりにだいぶ気持ちが落ち着いてきた頃、歩は顔を上げて変態教師と見つめ合うと口を開いた。
「二度と真澄に近づくな」
「…それはどうかな?」
怒気を含む歩の声にも動じない変態教師は、とぼけたように首を微かに傾ける。
…そうだ、あいつには弱みを握られている。
そんな俺の気持ちには気付かない歩は、無言でポケットに手を忍ばせるとあるものを取り出した。