第11章 honey.11
「今まで学校に連絡もしないで何してたの?」
「うるせぇ。それ以上真澄に触るな」
いつもとは全く違う声色と言葉遣いに、歩が本当に男だという事実が深く俺に突き刺さる。
ふたつに結ばれている髮は今日は下ろされており、服装もいつもより緩くだらしがない。
「…はあ。一応副担任だよ?俺」
「はっ。黙れ変態教師」
鼻で笑った歩が変態教師に向ける軽蔑の眼差し。
それは俺に向けられた訳ではないのに、まるで自分も軽蔑されているみたいで胸を抉った。
「っ、…離せ…」
自分でも驚く程に声に力が無い。
…こんな俺を見ないでくれ。
変態教師の腕の中で身を捩ったのと同時に、俺の瞳から涙が零れる。
どうにか変態教師の腕から逃れられた俺だったが、体に上手く力が入らずにそのまま後ろに倒れこんだ。