第10章 honey.10
カチッとお湯が沸いた音がしても、俺はソファーに座ったまま動かずにいた。
しん、と静まった部屋の中…風が窓を揺らす音と時計が時間を刻む音だけが俺の耳に届く。
「………」
体の力を抜いてソファーに倒れこむ。
ぼすっと衝撃が走る。
俺は……。
何がいけなかったのだろう。
どこで道を間違えたのだろう。
こんな状態になって尚…俺は自問自答を繰り返す。
そうして見つからない答えを探すように目を細め、微かな光を感じようとしているのだ。
変態教師に歩の事を聞いた時、感じたこと。
それが答えかもしれないと言うことは薄々感じてはいる。
…だが、俺はまだその答えを受け入れるだけの器を持っていない。
なあ歩…堕ちるところまで堕ちた俺の腕を…。
俺はゆっくりと腕を伸ばし、天井に掲げた。
ソファーに寝転び伸ばした指先の隙間から、漏れる電灯の光に目を細める。
「ーーーっ……」
掠れた声は…言葉にならなかった。