第10章 honey.10
「んっ…」
ベッドの中で身じろぎをしてからゆっくりとまぶたを開くと、目の前には規則的な呼吸を繰り返す彰の顔があった。
すやすやと心地よい寝息を立てる彰は寒いのか、すっぽりと毛布を首元まで引き上げている。
その寝顔を見ると少しの罪悪感が心の中に芽生え、身勝手なその感情に嫌気が差した。
ベッドに手をついて体を起こす。
ぱさっと被っていた毛布が肌を滑り落ち、ひんやりとした空気がすっかり熱を失った俺の肌を刺激する。
床に落ちた服を手に取り、身に纏ってから彰を見る。
起きる気配のない奴の髪を指先で少し弄んでから俺は部屋を出た。
リビングに戻るとそこにはクロの気配も無く、電気ポットに水を注いでからソファーに腰を下ろす。
「……はぁ」
そのため息はどんな感情によって俺の口からこぼれたものだったのだろうか。