第10章 honey.10
外から帰ってきた彰の指先は冷たく、唇をなぞられる度に俺はびくっと肩を震わせる。
「…俺が知らない間に帰っちゃうし、…何かあった?」
「何もねえよ…」
嘘だよね?なんて口にした彰が俺の瞳の中を覗く。
俺の少ない友達だけあってその辺には鋭い奴を下から見上げる。
やけに整った顔が視界いっぱいに広がった瞬間、何かがぐらりと傾き…崩れた。
…………ちゅ。
「………まっすん?」
彰の戸惑ったような苦笑いが目に入ったが、それには気づかないフリをして俺は目を伏せたまま指先に舌を這わせた。
冷たい指先が舌先から伝わり無意識に声が漏れる。
「んっ…ふ……」
ちゅ、ちゅと唇を指先に這わせ、彰の指先を口にパクリと咥え込む。
「……挑発してる?」
「…ん?…ふぁっ、……は。………さぁ?」
深く咥え込んでいた指先を口から離して見上げると、彰がごくりと唾液を飲み込んだのが分かる。
彰の指先は俺の唾液で濡れていた。