第10章 honey.10
いろんな考えがぐるぐると頭の中を回って。
正しい答えなんか導かれることがなくて、もやもやして。
どうしたらいいのか分からない状態で、俺はギッと唇を噛んだ。
「……っ!」
その瞬間ピリッとした痛みが走り、つっ…と何かが唇を伝った。
あっ、そうだ…切れてたんだったなココ。
「………まっすん?どしたのそれ」
その声にはっと顔を上げるとそこには少し驚いた表情の彰がいた。
いつの間に帰ってきたのか。
全く気がつかないくらい考えに没頭していたのかもしれない。
「……お前どこ行ってたんだよ」
「ごめん。ちょっと用事があって…。噛んだの?」
ジャケットを脱いでネクタイを緩めた彰が、ソファーの背もたれに手をついて俺の唇に触れた。