第10章 honey.10
さすがに胸騒ぎのした俺は、携帯の電話帳から彰を探した。
ボタンを押した後にすぐコールが続き、俺は耳に携帯を当てた。
無機質な機械音だけが耳元で鳴り響く。
「っち…」
いくらまっても繋がることのない電話の先を思い、苛立ちから舌打ちをした俺は画面を閉じて携帯をソファーに乱暴に投げた。
あいつ、どこで何やってんだ…。
ボスっと自分もソファーに座ると、携帯が反動で跳ねる。
「…にゃ」
ミルクをたいらげたクロがこちらを見上げて首を傾げる。
俺がこの家に来て最初に見た頃はまだ小さな子猫だったのに、今のクロはだいぶ成長して子猫の面影が霞んでいる。
子猫の成長は早い。
「…俺は何も成長してないな…」
歩が妹になってしばらくが経った。
あんな関係になってしまって、いつも俺は何かと理由を付けて逃げていた。