第9章 honey.9
「……っ、え?!」
背中に走った衝撃にさっきまでの俺の歩への思いがどこかに弾け飛ぶ。
その代わりに目の前にある生物教師の顔で、俺の頭は混乱を招いたのだった。
「…ちょっ、なにすんだよ!」
「ごめんね。…ちょっとゾクゾクしてね」
は……?
その言葉の意味が分からずに目を見開き瞬きをする俺の頬を生物教師の指先がつっ、となぞった。
「触んなどけっ!」
ばっとその手を振り払って体を押しのけようとするが、俺の体はすぐに後ろの机に縫い止められてしまう。
なんだよこいつ…っ!
「…最初から思ってたけど、本当にいい表情するよね。真澄くんって…」
ずいっと体が密着してさらに身動きが取りにくくなる。
背中にある机がひんやりと冷たい。
実験などをしやすいようにとなっている生物室の机は大きく、教室にあるものよりも高く頑丈だ。
そのせいで俺の足は爪先がギリギリ床につく位で、立ち上がることが難しい。
「ふざけんなよ…歩の話があるっつーから俺はついて来たんだ」