第8章 honey.8
あまり歩く振動を与えないようにと気をつけてくれている彰の腕の中で、俺は顔に張り付く髪の毛をかきあげた。
「お風呂、一人で入れる?」
「…バカにしてんのか?」
「んーん、心配してるの!溺れないでね…?」
腕の中で睨みつけると、彰は緩く頭を振ってから脱衣所の扉を開けてそこに俺を下ろした。
「着替えとタオルは後で持ってくるから、着替えは適当に置いといてね」
見慣れた脱衣所の中。
彰が立ち去った後を確認してから、ベタベタと気持ちが悪いシャツのズボンを脱ぎ洗濯機の中に放り込んだ。
ガラッと浴槽に続く扉を開けると、ふわっと中に閉じ込められていた熱気が俺の体を包む。
浴槽に溜まったお湯。
一刻も早く湯船の中に浸かりたかったが、ベタベタした体を先に洗い流す。
「ん…?」
ふと…、鏡に映った自分の姿。
「なんだ、コレ…?」
鏡の中に映し出された自分の鎖骨辺りに、鮮やかな赤いあざが浮かび上がっていた。