第8章 honey.8
次に目が覚めたのは、汗をかいた体がベタベタする不快感からだった。
「……ふぁ…」
よく寝た…。
もぞもぞと布団の中で体を動かし、ひょっこりと出した顔で辺りを見渡す。
とっくに昇ったと思われる太陽の光が射し込む窓。
夜中に目が覚めた時には居た彰の姿がない、ベッドのふち。
昨日よりも軽くなった体を起こして時計を見ると、針はもう昼前を指していた。
「……風呂、入ろ…」
ギシッとベッドを軋ませながら立ち上がった俺は、よたよたと歩いて部屋のドアノブをガチャリと開けた。
……そいえば俺、薬飲んだっけ…?
自分で薬を飲んだ記憶はないのだが、水と薬が喉を通った感触だけは嫌にハッキリと覚えている。
……つ、と唇に指先を這わせる。
彰…か?
そこまで考えた時、階段を上って来た彰の姿が視界に入った。
「あ…まっすん、起きてて大丈夫なの?」
「だいぶ良くなった」
近づいてきた彰が俺の体を支え、自然な流れておでこに手を当てる。
「ん、熱もだいぶ下がってるみたいだね」
にっこりと笑った彰。
「…みゃあー」
その背後で、クロが顔を出し一声鳴いた。