第8章 honey.8
「……ん…っ…」
深い眠りから一瞬で現実に引き戻された気分に、小さく身じろぎをした俺は再び眠りに落ちる前に目を開けた。
……俺…いつの間に寝たっけ…。
真っ暗な部屋でぼんやりと考えていた俺は、何を思ったかガバッと体を起こした。
…今何時だ…?
キョロキョロと見渡しても真っ暗な部屋では時計がある位置しか分からない。
辛うじて月明かりがカーテンの隙間から入って来ているだけだ。
ペタペタと手を彷徨わせて自分の携帯を探す。
………むにっ。
「……?」
ベッドの布団や、机とは違う柔らかな感触が伝わり思わず動きを止めた。
じっと目を凝らせ瞳が暗闇に慣れた頃、そこに現われたのはスヤスヤと規則的な寝息をたてる彰だった。
…ずっとそばに居てくれたのか…。
床に座った体勢でベッドに突っ伏すように寝ている彰。
指先だけで彰の髪を弄ぶように撫でると、小さく…ん、と身じろぎをする。
その姿が何時もの彰よりも数倍可愛く、俺の頬が無意識のうちに緩んでしまった。
「……ありがとな…」
感謝を述べた俺は手近にあった毛布を彰に被せ、またベッドの中へと潜り込んだ。