第8章 honey.8
「まっすん…?」
遠くで彰の声がするも、眠たい体はピクリとも動かない。
「寝ちゃったのかぁ…」
そっと俺の頭を撫でる彰の指先の感触がはっきりと伝わってくる。
俺の前髪をあげて、冷たいタオルをおでこに乗せる彰。
「あれだけ食欲があれば、風邪もすぐ治っちゃうよ」
ギシッとベッドが軋む音。
「…まっすんが寝ちゃうのが悪いんだよ…」
すっと彰の人差し指が俺の唇をなぞる。
「……ん」
俺の唇から、違う体温が伝わってくるのと同時に冷たい水が口の中にゆっくり入ってきた。
冷たい…。
うっすらと開いた瞳に、瞳を閉じた彰の姿がぼんやりと映る。
ーーーーーコク、ン……。
「…っ、ん…」
喉を鳴らして口内に入ってきた水と、薬を飲み下す。
「……っは、ん。いい子だね…」
濡れた唇を彰が拭ってくれたのを最後に、ぷっつりと俺の意識は途絶えた。