第8章 honey.8
彰の手助けでようやく起きることが出来た俺の背中には、クッションが当てられている。
「大人しいまっすんって言うのも何か変な感じだね」
面白そうな彰に突っ込む余裕も睨む気力も無い俺は、せめてもの抵抗に無言を貫いた。
「あはは。怒っちゃった?……ごめんね?」
そっぽを向いた俺に謝る気が全くなさそうな彰の声が届く。
ただ座っているだけでもズキズキと痛む頭に、彰からバカにされた怒りからでは無いイラつきがふつふつと沸き上がる。
「……まっすん?」
痛みは徐々に増す。
いてぇ…。
………ピトッ。
「………」
「…まだ高いね」
スルリと伸びてきた手が、汗で張り付いた俺の前髪を書き上げおでこに触れた。
冷たい彰の手。
そのまま彰の腕は優しく俺を引き寄せた。
体に力の入らない俺はなすがままに彰の腕の中にぽすっと収まる。
「俺に遠慮しないで、もたれかかっていいからね」
…言われなくても遠慮なんかしねぇよ。
斜め上から落ちて来た彰の声に、俺は全身の力を抜いた。