第8章 honey.8
「ふーん。あの人が俺たちの臨時教師かぁ…」
ふあっとあくびをした彰がしみじみと呟く。
あの後俺は机につっぷして、授業を聞かずに眠りに落ちた。
そんな俺を注意することなく臨時教師は授業を終え、終始、女子生徒達の視線を釘付けにしたまま教室を後にした。
「………」
「まあ、顔は整ってる方だから女子生徒にとっては嬉しい限りだろうけど…っと」
ぐっとソファーから体を起こした彰はうん、と背伸びをしてからまっすぐ俺を見る。
「気をつけた方がいーよ。…あいつ絶対裏があるから」
ちょんと人差し指を唇に当てた彰が妖しく笑う。
彰はこういう勘には鋭い。
「気をつけるも何も、そんなに関わらねぇだろ」
それは本心だった。
週一の生物の授業。
それが少し憂鬱になるだけだ。