第8章 honey.8
「朝からお熱いですねー」
バカにしたような笑い声と共に聞こえた声に後ろをふりむけば、そこには同じクラスの智也(ともや)がいた。
「もーまっすんが寒がりだからさー」
いかにも俺が強請りました、とでも言いたそうな彰の足を踏みつけてポケットから手を引っこ抜く。
その一部始終を見ていた智也は、相変わらず仲がいいなとケラケラと笑った。
「いったいよ、まっすん…」
メソメソと泣き真似をしている彰を無視して、智也と一緒に道路を歩いていく。
「真澄、少し元気無さそうだったけど、平気みたいだな」
にこっと笑う智也にドキッと小さく心臓が音を立てた。
「……え」
「いや、それよりちょっとこれ食ってみ」
食べかけの肉まんをずいっと口元に持ってきた智也に、温かく美味しそうなそれにもふっとかぶり付く。
「……うまっ!」
「だろ?」
よく人を見ている智也に感心しながら、俺も笑みを浮かべると智也は嬉しそうに肉まんに口を近づけていった。
「何か普通の肉まんと味違う?」
「新発売のすき焼き風味の肉まんなんだよ」
「俺も一口ちょーだい」
他愛ない話をする俺たちの間に彰が加わる。
そうして学校までの道のりを笑が絶えないまま進んでいったのだった。