第8章 honey.8
「なっ…!!」
どこのバカップルの行動だ!!
先程まで少なかった学生の姿も、学校の周辺に近づくにつれ多くなる。
そんな中での彰のこの行動。
ふざけんなよ…!
ポケットの中から抜け出そうと手に力を込めても、いつの間にか恋人繋ぎにしていた彰の指先にそれを阻まれる。
「はーい、まっすん歩みを止めないのー」
しかも狭いポケットの中で思うように動かせない。
手の方に集中して、度々止まる俺を引きずるようにして彰は歩いていく。
「……くっそ」
ふいっとそっぽを向いて、そう吐き出すと俺はマフラーに顔をうずめ直し、彰を見ないようにして歩みを進めた。
ポケットの中で彰の指先が時折、俺の指先をなぞり、指を絡ませ直す。
「おい、あんまり指動かすな」
手袋をした彰の指先がつ、と変な所をたまになぞるのでぞくっと体が震えてしまう。
「え、何?感じちゃう?」
にっと笑った彰にイラっときたが、言葉を返せばまためんどくさいことになるので俺は口を閉じた。