第7章 honey.7
はっ、と意識が戻った時。
それは歩が立ち去ってからどの位経っていただろうか。
たった数十秒だったかもしれないが、体感時間で言えば長い時間だった気がする。
物音一つ立てない歩の部屋のドアを一瞥して、俺は荷物を抱えると振り返ること無く階段を降りた。
外で待つ彰と子猫の事を思って足早になる足で玄関を開ける。
そこには猫と戯れる彰が、しゃがんだ態勢で俺を見上げていた。
「あー!まっすん遅ーい!」
「…悪い…」
地面に下ろしていた猫を抱え上げた彰がむくれた顔で俺を睨む。
彰の腕の中の子猫もにゃあにゃあと鳴き声を上げてこちらに抗議をしていた。
「……まっすんどうかした?」
顔色が優れない俺を覗き込む様にして尋ねてきた彰に、何でもないと顔を背ける。
彰は俺の持つカバンと腕の中の子猫とを交換すると、ちらりと家を見上げた。