第7章 honey.7
「あ、まっすん家帰らなくて平気?」
「は?」
今日も彰の家に泊まるつもりだった俺は言葉の意味が分からずに頭を傾げる。
彰は拾ったクレープをゴミ箱に捨てた後で、俺に向き直った。
「明日の教科書とか家に置きっ放しでしょ?」
………あ。
そこでようやく合点がいった。
明日はもちろん、今日も本当は学校があった。
あの時、荷物を置いて家から飛び出してしまった俺の手元には学校で必要なものが何一つとしてない。
一瞬よぎった歩の顔に帰りたくない気持ちが湧き上がるも、時間を見ればまだ学校が終わるまでは少し猶予がある。
ここから家までは徒歩で約20分、地下鉄を使えば10分弱で着く距離だ。
「…帰る?」
「……ん」
仕方が無い、そう自分を納得させて俺と彰は家に向かうため歩き出した。