第7章 honey.7
見覚えの無い男達。
俺達よりも2〜3歳年上な雰囲気のそいつらを、彰は目を逸らすことなく睨みつけていた。
彰のその態度に男達は次第に焦りやがて踵を返すと、一言も言葉を発しないまま走り去って行った。
…なんだったんだ?
「まっすん大丈夫…?」
ぽかんとする俺に、しばらく男達が去って行った方向を見ていた彰が声をかける。
「あ、…あぁ…」
大丈夫も何も、何もされていないし、何かされそうになっていたかも分からない俺は曖昧な言葉を返した。
「…せっかく買ったのに無駄にしちゃった」
張り詰めていた空気を払拭する彰の明るい声。
地面には無残な姿になったクレープが二つ落ちていた。
さっきの男達が逃げる時に踏んだのだろう足跡をクッキリと残したまま…。
「…さっきの奴ら…」
「うん。…俺もよく分からないけど…」
そう言って屈んで落ちたクレープを拾う彰の背中を俺は眺めていた。