第7章 honey.7
「首輪か…」
子猫の頭を撫でていた彰が急にしみじみとその言葉を呟いたので、思わずん?と聞き返してしまった。
「あぁ…何でもない」
取り繕ったような笑顔でそんな事を言われても決定力にかけるが、それ以上聞いても得することはないだろうと俺もそれ以上の追求はしなかった。
それから俺達の間には妙な沈黙が落ちる。
気まずさとはまた違う何か…。
だが妙に心地よい。
沈黙が苦にならない付き合いとはこの事を言うのだろう。
「……みゅ…」
最初は首に付いた首輪が気になるのか時折それを爪で引っ掻いていた子猫だったが、その内俺の膝に移動すると体を丸めてしまった。
「いろんな所に連れ回しちゃったから、疲れたのかな?」
スヤスヤと寝息をたて始めた子猫を眺め頭を数回なでた彰は、膝に手をついて立ち上がった。
「なんか小腹すかない?」
「…あぁ」
んー、と体を伸ばした彰はそのままくるりと体を回転させる。
「何か買ってくるね」
それだけ言い残して彰はどこかに行ってしまった。