第7章 honey.7
子猫は大人しくベンチに座ったままで、俺が持っている首輪をじっと見ていた。
チャリ、と小さく金属音を響かせて存在を誇示する俺の手の中にある首輪。
誰かが、縛りのない人生は一番の自由なのだと嬉々とした表情で口にしていた。
また、誰かは縛りがあるからこそ均衡が保てるのだと真面目な表情で言葉を紡いでいた。
どちらが幸せなのかは、俺が分かるわけもない。
「……みゃぁ…」
首輪を持っているのとは逆の指先で喉を撫でてやれば、子猫はゴロゴロと甘えた声を出して顔をすり寄せてくる。
穏やかなその表情を見て、俺はゆっくりと慎重にその首に首輪をつけた。
星のチャームが付いた首輪は、子猫の首にピッタリとはまると光に反射してキラリと光る。
「ん、似合ってる…」
「みゃあ!」
ベイビーブルーが子猫の瞳の色と綺麗に合い、子猫もそれが分かるのか満足気に一声鳴いた。
「まっすんいい物選んだねー」
ベンチの前でしゃがんでいた彰も子猫を撫でながら首輪を褒めた。