第7章 honey.7
「遅え」
「ごめん、ハニー」
誰がハニーだコラ!
ギロリと睨み上げると彰はごめん、と謝ってから俺の腕の中にいた子猫を抱き上げた。
「お前もごめんな?」
「ふにゃあ!」
抱き上げられた子猫は彰の指先をガジガジと甘噛みしている。
「いててっ」
こうして子猫と彰がじゃれあっている間にも通行人の視線は痛いほどこちらに突き刺さる。
…もう慣れたけどな。
そう、もう慣れたのだ。
「早く行くぞ」
「ちょっと待ってよ、まっすん!」
突き刺さる視線から逃れるように歩き出した俺についてくる彰の足音が背後から聞こえる。
深く帽子を被った視界はいつもよりも狭かった。