第7章 honey.7
平日の昼でも人は多く、その中でもかなり目立っているのが隣にいるこの男…。
「ごめんね、おねーさん。俺これから用事あるから遊べないんだ」
年下の力を発揮して、逆ナンをしてきた大学生くらいの女の人に彰は手を合わせて謝っている。
「えーっ?じゃあ、メアドだけでも教えてぇ?」
「んー、ごめんね?早く行かないと連れが怒っちゃうから」
ちらっとこっちを一瞥してきた彰に思いっきり顔を背けてから、腕の中にいる子猫と顔を合わせた。
もう怒ってるっつの。
さっきから何度目の逆ナンだ。
その度に俺は彰と距離をとって、一人離れた所でひっそりと様子を伺う。
俺は帽子を被っているので声は全くかけられていない。
っつか、自分のことくらい理解して帽子くらい被っとけよな。
「みゃー」
「なー」
俺の気持ちに同情するように鳴き声を一つ上げる子猫の額に額を合わせたその背後から、バタバタと走り寄ってくる足音が聞こえた。