第6章 honey.6
「……ケンタウロス」
俺が発言した瞬間、リビングの物音が全て消えた。
「………にゃ…」
「…ケンタ……ぶはっ!!」
人間の言葉を理解出来ないはずの子猫は俺を見つめたまま、顔を引きつらせる。
その後ろでキャットフードが乗っているお皿を運んで来た彰は腹を抱えて笑っている。
こ…こいつらっ!
自分でもこの名前はないと思った俺の頬がかあっと熱くなって、ゲラゲラと笑う彰に体がプルプルと震え出す。
「まっすん、それはっ…くくっ、どっちかって言うと馬の名前でしょ…っ、ははっ!!」
「う、うるせぇ!」
今だに笑っているいる彰に背中を向け、朝食を口に入れる。
床に下ろされた子猫は不満そうにカリカリと俺の足を引っ掻く。
「ははっ、あー、お腹痛い……っ、くく!」
そのまま笑い死にしろ!!
口に入った朝食を噛み砕きながら、後ろの彰に向かって心の中で言葉を投げる。
お腹を押さえながら彰は床にキャットフードが入ったお皿を置き、それに気づいた子猫は俺の足から離れて行った。