第6章 honey.6
「まっすんついてるよ…」
ふぅ、と息を吐いた彰がぐいっと体を乗り出し、指先で俺の口元を拭う。
「ん、おいし」
彰は赤い舌を出してぺろっと指先を舐めた。
…どこのホストだ。
呆れながらも二口目のフレンチトーストをフォークに突き刺した時、カリカリと小さく何かをひっかく音が俺の耳に届いた。
「…?」
カリカリカリカリ…。
その音はリビングの扉の外から聞こえてくる。
首を傾げる俺とは対照に、その正体に気づいているらしい彰は、ふっと笑うとイスから立ち上がった。
ゆっくりと彰が扉を開けると、リビングに転がりこんできたのはベッドにおいて来た黒猫だった。
「お前もごはん食べるか?」
片手で抱き上げた彰の腕の中でにゃあ、と返事をした子猫。
「彰、そいつの名前は?」
純粋に思った疑問を口にすると、キッチンに向かっていた彰の足がピタリと止まった。