第6章 honey.6
………もふっ。
「ん…っ…」
息苦しい。
もふ…もふっ。
口元辺りに何かふわふわしたものがあり、それが俺の呼吸を時折奪う。
酸素を求めて顔を背けても、そのふわふわしたものはまた俺の口元に戻ってくる。
……ぷすっ。
「…って!」
鋭い痛みが口の端に走って、俺は閉じていた目をぱちっと開けた。
「………え」
あれ…ここ、どこだっけ?
見慣れない天井が視界に入って一瞬ここがどこだか思案するも、すぐに昨夜のことを思い出す。
…そうだ。
彰の家に泊まったんだった。
口元のふわふわしたものを持ち上げると、それは黒い子猫だった。
「……みゃ……」
まだ眠そうな子猫をそっとベッドの上に下ろして上半身を起こす。
ギシッとベッドが軋む音に混じって、リビングの方から微かに物音がした。