第6章 honey.6
「コーヒーも淹れよっか?」
「……ん」
木のスプーンですくったアイスを口に含みながら、小さく頷く。
彰は冷蔵庫からケーキの入った白い箱を取り出した。
そういえばお土産にと買って行ったあのケーキはどうなっただろうか…。
家のテーブルの上に置いてきたケーキの行く末を思い、俺はまたアイスを口に含んだ。
甘くて冷たいそれはすぐ舌の上で溶けてなくなる。
「はい、タルトとコーヒー」
「さんきゅ」
彰が持ってきた皿の上には果物がたくさんのった見目麗しいタルト。
コーヒーにはもちろん砂糖とミルクが入っている。
「まっすんって甘いの好きだね」
「俺の半分は砂糖でできている」
「何それっ」
ははっと笑う彰の隣で俺は甘いはずのタルトを口に運んでいた。
…甘いはずなのに甘くない。
複雑な俺の心情を表したような…フルーツタルトだった。