第6章 honey.6
子猫は俺の膝の上で丸くなると、そのままスヤスヤと眠りについた。
あー、本当可愛い。
指先でふわふわの背中を撫でながら、無意識に緩んでしまう口元を抑えることが出来ない。
ひやっ。
「つめてっ!」
コツンと額に押し当てられた冷たい刺激。
「風呂上がりだから、まっすんはそっちの方がいいでしょ?」
コーヒーを片手にそばに来た彰が俺の手に置かれたそれを指差した。
俺の手の上にはアイスのカップ。
しかも一つ300円くらいするやつだ。
「………」
無駄に金持ちな彰は、このマンションに一人で暮らしている。
両親は海外で仕事をしているのだと聞いたことがあるが、それ以上の事は知らない。
「アイスが嫌ならケーキもあるよ?」
湯気が出ているマグカップを口元に持っていく彰をジト目で睨みながらも、俺はアイスのカップのフタを開けた。
「……ケーキも食う」
いじけた子供のような態度で答えた俺を見て、どこか満足気に笑った彰はマグカップを置いて立ち上がった。