第6章 honey.6
シャアアアッ…。
俺しかいない閉じ込められた風呂場の中。
ベタつく体の上をお湯が走り、不快感を拭い去ってくれる。
「………はぁ」
さっきから何度吐き出したか分からないため息が、また口から零れ俺は眉を寄せた。
俺のとこよりも数倍広い風呂場の中で、シャワーの音だけがこだまして耳に入ってくる。
っつか、俺何やってんの…。
ズルズルと壁に背中をこすり合わせるようにしてタイル張りの床に座り込む。
「くそっ…好き勝手に触りやがって…!」
歩も、…彰も。
前までだったら…いや、歩に会わなかったら俺はさっきの行為をもっと本気で拒否してたはずだ。
殴ってでも彰の手から逃れていたはず…。
あの時ふざけてされたキスとは違った。
舌が絡み合い、呼吸を奪うようなあのキスは…彰の本気のキスだった。