第6章 honey.6
「とりあえず、中入ろうな」
玄関先で抱きついたまま動かない俺を促して中に入る彰。
俺は彰の胸元にしがみついたままで、彰はそんな俺を半ば抱きかかえるようにしていた。
「……」
「…よしよし」
広いリビングのソファーに座った彰は、その膝の上に俺を乗せて頭を撫でる。
「子供扱い…すんなっ…」
「はいはい」
そのまま、また頭を撫でてくる彰にむっとしながらも、離れることは出来なくて。
彰の胸元に気づかれないようにすり寄った自分は、どう見ても子供そのものだった。
ふわりと香る石鹸の匂い。
…風呂上がり、か。
ちらりと上げた視界には、まだ微かに濡れている彰の髪が映る。
彰とは反対に体がベタつく不快感を抱きながらも、俺の頭の中は歩の事でいっぱいだった。