第6章 honey.6
歩は一人であの家にいる。
どんな表情で、どんな感情を抱いているのだろうか。
そんなもの…俺が気にすることじゃない。
せいぜい罪悪感に苛(さいな)まれて傷ついていればいい。
…あいつに罪悪感なんてあるんだろうか。
いつもなんとなく本音を隠している歩は、目を離すと何処かに消えてしまいそうな危さを感じる。
俺を乱す時の歩の瞳は、暗く影を差しているんだ…。
あの行為は別に男女が愛し合うのとは全く、180度違う。
ただの性欲処理。
好きじゃなくても体を重ね合わせることは誰にでも出来る。
中には愛しい人のみとする行為だと思っている人もいるが、それはそれで美しいものだと思う。
俺には真似できないから…。
「……好き……」
それはどんな感情だ…?