第5章 honey.5
冷たい夜風が俺の頬をなぞっていく。
街灯だけが道路を点々と照らす暗い道をただひたすらに走る。
脳裏に浮かぶのは、先程の行為。
歩の手が俺の肌をなぞる感覚。
最初は嫌だったのに、今ではもう女を抱くよりも抱かれる方が…俺の中でしくっりくるようになっていた。
歩は男なのに…。
気持ちいいなんて。
久々に触れた歩の指先は、温もりはすんなりと受け入れることが出来て…。
「……俺はっ…」
その後の言葉を飲み込んだ俺は、その考えを捨てるように頭を降った。
それでも歩に触れられると、安心するのは確かで…。
家を飛び出す前に見た泣きそうな歩の顔を思い出して、胸がズキリと痛んだ。
歩への想いを朧(おぼろ)げに理解した俺を追い詰める出来事が待っていることに、俺は少しも気づかなかったー…。
【END】