第5章 honey.5
呆然と俺を見上げる歩を見下ろしながら睨みつける。
「お前とは二度とこんなことしねぇ」
「…真澄…」
こんな時だけ、縋るような目で俺を見るな。
「もう知らねぇよ。お前の顔なんか見たくねえっ!!」
それだけ怒鳴り散らすと、俺は口を開いて何かを言おうとしてまた口を閉じた歩を置いて、リビングを飛び出した。
玄関に置いたままのカバンも今は視界に入らず、すぐにでもここから離れたかった俺は靴を履くと、何も手に持たないまま玄関を開け放つ。
走っていると、さっきのは近所迷惑だったかなと思いとは裏腹に頭は冷静そのものだ。
「はぁっ、はっ…」
さっきまでの行為で息が上がっていた体に全力疾走はキツイ。
苦しくて何度も息を吸い込んでは吐く。
胸がズキズキと痛むのは苦しさからではなく、歩の所為だ。
俺が彰とどうにかなるはずなんてねーのに。
俺は……。
なんで、歩に信じてもらえなかったことがこんなに悔しくて辛いのだろうかー…。