第5章 honey.5
「おまっ、寝て無かったのか?!」
未だにバクバクと脈打つ心臓を押さえながら、ソファーに座ったままの歩を見る。
風呂上がりだからだろう。
長い髪を下ろし、パジャマ代わりの裾が長いシャツを…って!!
「それ俺のシャツだろっ!!」
歩が着ていたシャツは間違いなく俺のものだった。
裾が長いと言っても、歩は下に短パンを履いている。
「だって真澄が俺のこと避けてるから…」
手が少し隠れるくらいの長さの袖にちゅっと軽く口付けた歩が、こちらを見てニヤリと笑う。
「…っ、別に避けてねーだろ」
「……そう?」
床に視線を落とすと、歩は立ち上がりそばにあったパーカーを羽織った。
ドクドクと心臓が音を立てて、居心地が悪い。
早くこの場から立ち去りたくなった俺は、とりあえずテーブルの上にお土産のケーキを置いてリビングを出て行こうとした。