第5章 honey.5
「ただいま…」
小さく呟いた言葉に返ってくる言葉はもちろんない。
風呂入ってさっさと寝るか…。
そのまま風呂場に向かおうとした俺だったが、右手に持ったままのケーキに気づいて足を止めた。
紙袋の中から覗く白い箱。
その中には、見た目も綺麗なケーキが入っている。
歩のお土産として買ったものだ。
…あいつ甘いモノ好きだっけ?
歩と距離を置いているのに、喜ぶ顔が見たい…なんて。
「…はぁ」
自分でも自分がよく分からない。
きゅっと方向転換した俺はリビングに続く扉を開け、真っ暗な部屋の電気をつけた。
パチッ。
スイッチを押した瞬間、パッとついた電気が目に刺激を与える。
「おかえり真澄」
「うわあっ?!」
不意に言葉をかけられてガタッと後ずさって確認すると、ソファーに腰掛ける歩の姿が視界に入った。