第5章 honey.5
「あれ?大人しいね」
「今だけだっつの…」
もそもそと彰の腕の中で動き、その胸に額を擦り付ける。
「ふはっ。まっすんって意外と可愛いよね〜」
「はあ?バカにしてんのか」
「してないしてない」
下からニヤついている彰を睨むと、ぽんぽんとなだめるように頭を撫でられた。
…やっぱバカにしてんだろ。
それ以上は何も言わない。
頭を撫でる彰の手の平の体温を感じながら目を閉じた。
こいつは俺が少しでも落ち込んだりしていると、こうして頭を撫でたりしてくれる。
最初は同性で、はたから見たら抱き合っているようなこの行為が嫌だったが、何度もされる内に慣れてきた。
深くまで追求してこないこいつとの距離が俺にはありがたい。
別に男女が抱き合うようなのではなく、胸を借りると言った方が正しいのかもしれない。
「…あー…やべ。…抱きたい……」
「あ?何か言ったか?」
「何にも?」
ボソッと何か呟いた声が聞こえたが、俺は顔をあげることは無かった。
その時の彰の瞳が妙に熱を持っていたことに気づかないまま…。