第5章 honey.5
「まっすんそんなに怒らないの」
眉間に寄った皺を彰が指先でピンっと弾き、俺の手の中にあった缶ジュースを奪った。
……いてぇよ。
背後から微かに授業をしている先生の声が聞こえる。
弾かれた部分を手でさすりながら無意識に顔を背けた俺。
そんな俺を彰は見逃さなかった。
「…どーしたの?あの教師に何かされた?」
「………は」
くいっと顎を持ち上げられ、2センチ身長の高い彰が俺を見下ろす。
その瞳の奥が怪しく、全てを見抜くように光り、ゴクリと俺の喉が上下した。
じっと見下ろしていた彰が何かに気づいたように俺の首元に顔を近づけ、すん、と鼻を鳴らした。
「…香水の甘ったるい匂いだね」
知られてまずい訳ではないのに、背筋がぎくっと反応する。
「久々の女の肌の感触はどうだった?」
「…まあ、普通…」
「ふーん…?」
目を伏せながら答えた俺を見つめたまま、彰はそれ以上何も言ってこなかった。