第5章 honey.5
鍵、締めたよな…。
女子生徒が帰った後、俺は確かに鍵をかけた。
だんだんと近づいてくる足音に耳を傾けていると、ピタリとこの教室の前で止まった。
一瞬、彰かと思ったが足音が違う。
警戒しながら窓枠に預けていた体を起こす。
ガチャンと音がして扉を開けようとした誰かがいることが分かる。
だが、扉には鍵がかかっているため開くことはない。
少しの沈黙があり、諦めたかと思ったのも束の間。
カチャッ。
え…。
鍵が開けられた音とともに、ガラガラと扉が開いていく。
身構えるとそこに立っていたのは知らない人だった。
相手も俺を当たり前だが知らない。
目をパチクリさせるスーツにネクタイの30代くらいの男性。
教師っぽい出で立ちだが、この学校にこんな先生はいない。
誰かの親…とかか?
視線を外さずに考えを巡らせていると、相手が柔らかく微笑み口を開いた。