第5章 honey.5
「………」
窓枠に浅く腰をかけた俺は青空を見つめていた。
女子生徒がいなくなった生物教室には香水の残り香だけが漂っている。
『なんかいつもの真澄のHじゃなかったけどぉ〜、これはこれで気持ちよかったよ』
にっこりと微笑む女子生徒の顔が頭に浮かんでから消えていく。
…気持ちよかった、か。
「俺は……」
その後の言葉は俺の口から出てくることはなかった。
電気がついてない室内は薄暗く、窓から入ってくる太陽の光が床に俺の影を落としている。
このまま俺は取り返しのつかない所まで堕ちていくんだろうな。
先の未来を思い浮かべ、俺は自虐的な笑みを浮かべる。
感情で押さえつけていても体は素直に反応してしまうのが、人間の悲しい性(さが)。
目を閉じて窓に体を預けると、廊下の向こうから微かな足音が聞こえてきた。